富山といえば「薬売りのまち」。
薬の力を司り、人々の健康を守る仏様「薬師如来」から由来して、かつては医師や薬屋さんのことを一括りに「薬師」と呼んでいたとか。
実際、県内には「薬師岳」という名前の山もあります。
今回ご紹介するお店は、そんな薬のまちの歴史と関わりが深い、あるお蕎麦屋さんです。
開店は昭和8年!千石町通りのおそば屋さん
大手モールに隣接する千石町商店街の入り口から、花水木通りに向かってまっすぐ歩くと見えてくるのが「くすしそば本舗・自家製めん処まるぜん」さん。
創業はなんと昭和8年!
三代以上にわたって商店街の移ろいを見守ってきた、富山市有数の老舗です。
木目調の看板や貼りだされたメニューが、ノスタルジックな雰囲気を醸し出していますね。
ちなみに、駐車場はお店正面からみて右側にあります。
かなりスペースが確保されていて、車社会の富山にはありがたい配慮です(笑)。
のれんをくぐって中に入ると、にこやかな女性の店員さんが手際よく席へ案内してくださいました。
ピークを少しずらして14時ごろに伺いましたが、テーブル席は地元の方らしきお客さんでにぎわっています。
店内は昔ながらの一軒家のような様相。
初めておじゃましたにも関わらず、どこか懐かしいというか…ものすごく落ち着きます。
カウンターの奥にはお座敷もあり、夜の営業では団体での飲み会や宴会の予約も受け付けているそうです。
「めん処」の名の通り、メニューはざる、天ぷら、にしんなど、うどんとそばの定番メニューがずらり。
定食や丼セットもあって、お腹いっぱい食べたい人にうれしいラインナップが揃っています。
ほぼ全てのメニューで麺の種類や大盛・特盛を選べて、カスタマイズの幅がとっても広いです。
人気No.1の「鴨せいろ」くすしそば
まるぜんさんの看板メニューは、富山産を含む国産そば粉を使用し、こだわりの生薬をブレンドさせた「くすしそば」。
「くすし」というのは、冒頭で紹介した医療や薬学の専門家たちの呼び名ですね。
昭和58年ごろ、当時の店主の方が約100種類もの生薬を用いた実験を重ね、4年の歳月を経て生薬特有の風味をうまく抑えたオリジナルの麺を完成させたそうです。
富山の伝統が息づくお蕎麦…これは気になります。
ということで、メニューに「人気NO.1」との記載があった「鴨せいろそば」を、くすしそばで注文しました!
フワーッと湯気が立つ鴨汁と、艶やかな茶色を帯びたおそばの光沢が食欲をそそります。
一見すると、普通のおそばと変わりはありませんが…
試しに一口、何もつけずにそのままいただくと、噛むほどに深い味わいと香りが。
麺は十割そばによくあるポソッとした感じではなく、モチモチとした心地よい食感です。
「薬膳」という言葉から、なんとなく苦みや渋みがあるようなイメージを抱いていましたが…
全くそんなことはなく、むしろそばの風味と完璧なバランスをとっています!
もしかすると、普通のそばが苦手な人も食べられるかも…?
鴨汁はお醤油ベースで出汁がタップリ。濃厚ながらも上品な味わいです。
鴨肉の旨味がしっかりと溶け込んでいて、軽やかな味わいのくすしそばと相性バツグン…!
ねぎがトロトロに煮込まれていて、大ぶりの鴨がゴロゴロ入っていました。
ちなみに、くすしそばにはオウセイ、サンザシ、サンヤク、カッコンといった薬膳が隠れているそうで、食べ終わるころには汗だくに。
カーディガンを着て行ったのを後悔しました(笑)。
食後には蕎麦湯もいただき、体も心もポッカポカです。
富山ブラック「だいき」もおすすめ
ラーメン好きの方は、もう一つの看板メニュー「だいき」もおすすめです。
こちらは現在の店主の方が、かつて修行を積まれた中華そば専門店の味を再現したメニューで、「旨塩っぱい」スープと極太の麺が根強い人気を集めています。
富山の名物「ブラックラーメン」がお好きな方は、ぜひ試していただきたい一品です。
また、まるぜんさんはネットショップも開設されていて、今回いただいたくすしそばの乾麺と生麺がオンラインでいつでも購入できます!
歴史が深いお店ながら…いや歴史が深いからこそ、さまざまな取り組みを通じておいしいものを一人でも多くの人へ届けているのだと感じました。
活き活きとした店員さんの対応が心地よく、常連さんと思われるお客さんと、親しげにお話しをされている様子が印象的でした。
こだわりが詰まった製法と、古来から受け継がれる知恵が刻まれた一皿で、富山の新しい魅力を見つけたような気分です♪
くすしそば本舗・自家製めん処 まるぜん
住所:富山県富山市千石町1丁目5-5
アクセス:富山地鉄市内線1・2系統「上本町駅」から徒歩約8分
TEL:076-421-6932
営業時間:11:30~15:00、18:00~21:00
定休日:日曜日